海嘯 (中公文庫)



海嘯 (中公文庫)
海嘯 (中公文庫)

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『海嘯』

南宋が滅亡に到る過程を事細かに知ることができ、文天祥などといった当時の主要人物も数多く登場するので、興味を持続できる作品でした。
ただし、内容が浅く完成度が低い印象を受けたので、是非とも再構築して出版し直して欲しいです。
国に殉じた士大夫らの壮絶な最後

 中国において王朝が滅びるときには、朝廷が腐敗し、民を苦しめ、農民反乱が多発し、やがて天下取りレースがはじまり、乱世を平定した「英雄」が新王朝の始祖となるというのが、たいてのパターンですが、宋滅亡においてはその型はあてはまらない。なぜなら、宋の朝廷はまだ腐敗していなかったし、人心も離れていなかった。そして最後の皇帝は、何の罪のない子どもだったのだ。ゆえに、モンゴルの行動は侵略以外の何ものでもなく、大義名分すらたたない。
 この作品は、宋王朝が沈むとき、最後まで元軍と戦った宋の士大夫たちの姿を描いたものである。一応、主役は有名な状元宰相の文天祥だが、彼だけの活躍が特記してあるわけではない。宋の士大夫たちの、それぞれの生き様を記しており、読んでいくにつれ、痛ましさが増していきます。幼い皇帝を背負って海に身を投げた陸秀夫、そのあとを追った国舅、宦官、宮女たち、幼主や皇太后を失ってもなお元軍と戦おうとした張世傑、そして元軍にとらえられ四年間監禁されながらも、ついに元につかえることをよしせず、宋の臣下として刑場の露と消えた文天祥。死を求めることが必ずしもよいとは言えないかもしれませんが、彼らの生き方は尊敬に値するものだと思います。
亡宋の武将たちの浪漫

崩れゆく国の中で、それぞれの生き様をもって、ある者は運命に従い、ある者は運命に抗い。それでも歴史は流れていく。
歴史とは、人と人が織り成す広大な物語であることを改めて痛感します。

田中芳樹氏の歴史観を見事に反映した、名作といえるでしょう。
歴史物にありがちな、史実を書くのではなく、物語としての圧倒的な存在感、同氏の力量が存分に発揮されています。
宋末元初の大群像劇

 治乱興亡は歴史の常。しかし南宋のごとく悲哀に満ちて滅びた王朝は少ないだろう。興隆する元。追い詰められる南宋。歴史が動く時、人もまた、大いに動く。

 日本では馴染みの少ない中国の宋末元初を描くこの物語は圧倒的な質量を感じる大群像劇だ。テンポよく、飽きずに読み進ませる筆者の力はさすがである。しかし、この時代のあまりの質量に筆者自身が圧倒されているようでもあり、ただ歴史的な事柄を羅列するに終わってしまっている。魅力的な題材であるだけに、実に惜しい。



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