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絵はがきの時代
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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バツグンに面白い!
著者は絵はがきコレクターではあるが、他の著書の資料収集のなかで、絵はがきに出会い、以来7年「収集家を自称するには日が浅い」というが、たいした収集だし、ともかく面白い。絵の余白について、観光地から自分に差し出した絵はがきについて、あるいは災害絵はがきや、英国でのジャポニズム・ブームなど、和洋のあらゆるところを逍遙しながら、絵はがきの、誰も書いてこなかった文化史を書き上げている。しかもやたら参考資料を引用するような文化史本ではなく、自分自身の疑問や探究心から入っている文章だから読むほうも自然に引き入れられる。
「スケールエラー」「都市の透かし絵」「おとぎの国の黄昏」「彩色という痕跡」など、目次の小見出しを見ただけで読みたくなるし、またきちんと読ませる素晴らしい本。
絵はがき収集の奥深さ
私は飽きやすい性質であり、これといって何かを集めたことはない。
強いていえば、国鉄の切符、放送局のべリカード、カルビーのプロ野球カード位だろうか。
しかも、中古品ではなく自分で買い求めた新品だけであった。(ベリカードは買うことはできないので、自分で直接放送局から送付してもらった)
本書は、浅草十二階の研究がきっかけで絵はがき集めにはまってしまった、著者の研究成果である。
絵はがきにからは時代やその場所やそれぞれの思いが伝わってくる。
これは、国鉄の切符やベリカード収集にも感じることは出来る。
私も切符を見ることにより、その切符を購入した当時のことや、その切符の購入場所を思い出すことができる。
また、ベリカードからは雑音と戦い、稚拙な英語力をフル回転してレポートを書いたことを思い出すことができる。
絵はがきはそんな切符やベリカード以上に、特に中古品にはその差出人の書いた通信文により、宛先人への思いなどを知ることも出来る。
また、どのように保管されていたかなど、画鋲の穴から想像するという全く他の収集とは違った楽しみ方も本書では紹介されていた。
著者は動物学を学び、エレベーター内での人の行動を研究(これは正高信男著「ケータイを持ったサル」でも紹介されている)したコミュニケーション論の専門家である。
エレベーターの研究をきっかけに浅草十二階に興味を持ち、そして絵はがきのコレクターとなった。
故に、単なるコレクターとしてではなく、一枚の絵はがきを多方面より見つめ、その絵はがきの関係を推察しており、非常に面白い本である。
ビミョーさが魅力的なハガキというメディア
この本、サイコーに面白かった。やっぱりハガキっていうメディアへの思い入れ、親しみがあるからなんだと思う。それってすごく世代的なものがあって、僕はいま40代なんですが、「メール・ケータイの時代」の前に「電話の時代」があり、「手紙・ハガキの時代」も経験してるんですよ。そんで、手紙・ハガキ時代が思春期に該当してて、そうしたパーソナル・メディアってつまり恋愛とすっごくリンクしてるわけで...。
「ごく個人的で親密なことばを絵はがきの余白に添えることがある。誰の目にもとまりうるがゆえに誰も気にはとめないだろう、という大胆な予測のもとに」なんてハガキ論にはだから思いっきり反応してしまう。年賀状にその子にだけ特別に練った「伝わるかなぁ、伝わんねぇだろうなぁ、伝わってほしいなぁ」ってゆー、ビミョーな文章とかさ。「紙は折られるだけで秘密めく。本は秘密の束である」「手紙こそ、周囲の憶測を呼ぶ不用意な形式」なんて、まさにその通り。ハガキっていうライトでオープンなメディアに込める若人の熱くて暗いメッセージってのが、中途半端な中坊にはピッタリで。
フランスの郵便局がその昔に出した禅問答のような局員通達にも笑った。曰く、
郵便局員に以下の行為を禁じる。
(a)はがきを読むこと
(b)人を辱める表現、侮蔑的な表現の書かれたはがきを送信、転送、配達すること
これ、「読まずに読め!」ってことだよね。そうすると、さっきの“絵はがきの余白に添える”メッセージは行間を読ますわけだから、「書いてないことを読め!(読んでね)」ってことで、まことにハガキは奥が深い。
他にも「絵はがきの消費量が劇的に増えたのは日露戦争期」とか「絵葉書の流行が文学の気分に影響を与えた」とか「漱石『三四郎』の郵便メディア的考察」とか、特に本の前半が充実してる。これ、文句なくおススメ本です。
絵はがきの中へ旅する本
タイトルになっている「絵はがきの時代」とは、19世紀末から第一次世界大戦にかけて、世界のあちこちで人びとが絵はがきに熱狂した時代を指している。当時、絵はがきの展覧会や交換会、絵はがきの専門雑誌が発刊されたりしたそうだ。
一般のひとにとって絵はがきとは、観光地で買う風景写真や、博物館などで販売される所蔵作品の写真などであって、なんでこれがコレクションの対象になるのか不思議に思われるに違いない。著者は前著『浅草十二階』の資料集めがきっかけで絵はがきを「繰り始めた」。絵はがきを眺めることによって、発行された当時の「風景」を知る手がかりになるからだ。
本著で紹介されている絵はがきは、書き込みがあったり、画鋲のあとがあったりする使用済みの絵はがきである。著者はそこから差出人を初めとする、絵はがきが辿った道を知り、また絵はがきの持つメッセージを読み取って読者に伝えようとしている。
表紙や口絵の絵はがきの写真が美しい。また文中にも多くの珍しい絵はがきが満載されている。文章がとても読みやすく、わかりやすい。まるで著者と一緒に旅をしながら、旅先の解説をしてもらっているようだ。ひょっとしたら、読者を絵はがきをめぐる旅に誘うのが著者の目的だったのかもしれない。絵はがきに関する興味深い歴史の逸話も紹介されているので、永久保存本としても最適。
青土社
絵はがき100年 近代日本のビジュアル・メディア (朝日選書791) 絵はがきで見る日本近代 日本絵葉書カタログ〈2005〉 主観 メディアアートの教科書
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